農薬散布ノズルの遠隔操作
藤澤 善久
1. 研究目的
農薬散布は炎天下に重装備で行うことが多く,薬剤に触れることも多い作業である。また,市販されている散布機では病斑部分への選択的な散布を行うことができないので,必要以上に農薬を使用してしまう。そこで本研究では作業者の労働力軽減,安全の確保および目的位置への適量散布を目的として,遠隔操作で散布の行える防除システムを開発し,その操作性について検証した。
2. 実験装置および方法
散布対象は傾斜棚プレート栽培のキュウリで,試作した防除システムを図に示す。作業者はTVカメラからの映像を見ながら遠隔地より操作を行い,ノズルを3軸方向へ移動させ目的の葉に近づけ,ノズル先端を回転させて罹病部に農薬散布を行う。今回比較検討を行ったカメラの位置およびモニタ数は表の通りである。カメラはCCDカメラと3Dカメラを用いた。3Dカメラは映像変換器とシャッタグラスを用いて立体視を表現するもので距離感を得るために用いた。カメラ位置A,Bは上下スライドによって移動し,Aはさらにノズルと共に移動する。カメラ位置Cは上部から全体を見渡せる位置に固定した。作業者はあらかじめ撮影した作物全体の写真を見ながら目的の位置にノズルを誘導した。またカメラが2つ,モニタが1つの場合には作業者がカメラの切り替え作業を行った。実験は4名の被験者にノズル先端と10枚の葉に付けたポイントに対して最短距離が10cmになるように操作を行ってもらい,位置の正確性と作業時間を計測した。
3. 結果および考察
1つの作業方法につき1人4回の試行を行った結果を表に示す。作業時間は全ての葉への作業にかかった時間の平均で,目標との差は目標とした箇所からノズル先端までの平均距離である。作業時間に関してはカメラ1つを用いた@,Dが速かったが,位置精度では2つのカメラを用いた他の方法には及ばなかった。A,B,Eは同等の結果となった。これは前後方向の距離を得るために使われていた位置Cのカメラで全体を見たからである。また,人によってはDの方法でCと同等の時間,精度を得たが,3Dカメラはかえって見づらいとの意見が多かった。このカメラを使いこなすためには多少の訓練を要すると考えられた。最も精度がよく,比較的作業時間が短かったのはモニタを2つ使用したCの方法であった。この理由として,2つのモニタを同時に比較しながら作業を行えるために位置把握がし易かったこととカメラの切り替え操作が必要なかったことが上げられる。
図 隔操作型防除システム
表 材質の比較実験結果
| 位置 | カメラの種類 | モニタ数 | 作業時間(s) | 目標との差 (cm) |
@ | B | CCDカメラ | 1 | 153 | 3.6 |
A | B,C | CCDカメラ | 1 | 228 | 2.7 |
B | A,C | CCDカメラ | 1 | 214 | 2.5 |
C | B,C | CCDカメラ | 2 | 205 | 1.6 |
D | B | 3Dカメラ | 1 | 199 | 2.9 |
E | B | 3Dカメラ | 1 | 258 | 2.5 |
C | CCDカメラ |